若草山焼き後の焦げた草を食べる鹿
写真1
[写真1]

(初出:若草山焼き2011

この写真は2011年の若草山焼き後に若草山山頂で撮影したものですが、複数の鹿が、このように焦げた草を食べる様子を見ることが出来ました。

あえて選んで食べているようにも見えたので、不思議に思ったのを覚えています。

大とんどの翌日
写真2
[写真2]

(初出:春日大社・大とんどでの鹿スナップ2012(と2004年)

こちらは春日大社飛火野で行われた2012年の「大とんど」会場の翌日の様子。まだ燃えカスや炭が散乱している場所で、鹿たちが何かモゴモゴとやっているのが見えました。

この光景もとても不思議に思ったのですが、この時は何か食料を探しているのだろうと思いました。

今年の大とんど翌日
写真3
[写真3]

(初出:鹿スナップ集 vol.97 春日大社・大とんど2015

灰を掘り起こして一生懸命に何かを探している様子。

このように、若草山焼きや大とんどの行われた後に、焼け焦げた所に群がる鹿たちの様子を、このブログでは過去に何度か記事にしています。

若草山焼き2011
http://naraphoto.blog.jp/archives/2301968.html
春日大社・大とんどでの鹿スナップ2012(と2004年)
http://naraphoto.blog.jp/archives/2302353.html
早朝の奈良公園界隈スナップ vol.14 大とんどの翌日
http://naraphoto.blog.jp/archives/2302925.html
鹿スナップ集 vol.97 春日大社・大とんど2015
http://naraphoto.blog.jp/archives/1018497076.html

ここからわかるように、鹿たちのこの行動は、そのときたまたま見られたものではなく、毎年同じように繰り返されているものであるといえそうです。

というわけで、今回ちょっと調べてみました。

が、山焼きやとんどの焦げ焦げに群がる鹿について記述・解説したブログやサイトというのは見当たりません。

そこで「山火事などで森が焼け、その焼跡に野生動物が群がってくる様子」が観察された事例が無いか検索してみたところ、「動物たちの自然健康法 野生の知恵に学ぶ(紀伊国屋書店)」という本の存在を知りました。WWFのサイトにその紹介ページがあります。

Nature Library / 本の紹介コーナー|資料室|WWFジャパン
http://www.wwf.or.jp/join/panda/2003/11/903901.html

この本の104~105ページから一部引用すると

野生動物はときおり、山火事や落雷のあと炭に出会うことがある。ジュリエット・ドゥ・ペラクリ・レヴィは「野生動物は炭が体にいいことを知っていて、木の焦げる匂いがすると、その結果できるはずの炭をもとめて群をなしてやってくる」と書いている。彼女はイングランド、ニューフォレストの山火事の焼け跡にシカとポニー、それにミツバチの群までが集まっているのを見たことがある。ほかの動物行動学者も彼女の観察を裏づけている。(中略)研究の結果、動物がなんの栄養もない炭を食べるのは、毒素を吸着する薬理作用のためであることがわかった。

この本では、野生動物たちが自分の健康を守るためにとる様々な行動について紹介しています。

例えばある植物の毒を無効あるいは悪影響を最小限にするために別の植物を食べたり(この結果食べられる植物の種類・量が増えることになる)、ミネラルを補給するために粘土を食べたり(粘土摂取には解毒の役割もあるらしい)、そういった植物や粘土の選び方・摂取のタイミングなどを、いわば生活の知恵として彼らは知っているのだそうです(そういう行動をとる個体が自然淘汰の結果として生き残ってきた)。

そういった行動の一つとして、動物は炭を食べる場合がある、と。

で、ここまで調べて来てから「動物 炭を食べる」で検索すると、結構色々な事例が出てくる事に気づきました。興味があったら調べてみてください。例えば犬も炭を食べることがあるらしいし、人間用の食べる炭なんていうのも存在するらしい(効果のほどは知りません)。

というわけで、山焼きやとんどの焼け跡に鹿たちが群がるのは、そこに食べ物を求めているというよりは、炭そのものを求めてやって来ていると考えるのが妥当ではないかと思います。

さてここからは余談ですが、奈良公園の鹿たちを見ていると、この他にも日ごろから不思議に思う行動を見ることがあります。その代表格が次の写真。

鎖を噛む鹿
写真4
[写真4]

(初出:鎖噛み鹿 vol.6

一時期テレビや新聞などで取り上げられるなどして話題になった、東大寺南大門付近にいる鎖を噛む鹿。何故噛むのか(しかもほぼ冬季限定の行動)は未だ謎のままですが、一説によれば鉄分を補給する意味合いがあるのではないか、ともいわれます。

他の鹿の尿を舐める
写真5
[写真5]

(初出:行列! 鹿スナップ

この写真、まさに放尿している所へ顔を突っ込んでいこうとしているところです。といってももちろん、浴びようとしている訳ではなく(笑)、地面に溜まった尿をペロペロと舐めようとしています。たまにこのような光景を目にし、そのたびにとても不思議に思っていました。

そしてこの本には下記の記述がありました。

多くの動物はナトリウムを含んでいる尿を熱心になめる。ペットのイヌが塩辛い尿をもとめてトイレについてくることもある。トナカイも放尿中の牧夫の邪魔をすることがあるようだ。(p.52)

更に、メス鹿がゴリゴリと何かを口の中で舐っている光景に出くわしたので暫く観察していると、その舐っていたものが口からこぼれ落ち、何だろうと確認してみたら、オス鹿の角(奈良公園でいうところの「菊座」)だったという事がありました。これも当時すごくびっくりし、その行動の意味が分からなかったのですが、この本にはこのような記述がありました。

ヘラジカ(ムース)などの偶蹄類では、角が生えるときに大量のカルシウムと燐酸が必要である。一日に四〇〇グラムもの新しい角の組織をつくるには自分の骨からミネラルを転用しなくてはならない。土に(したがって植物にも)カルシウムや燐酸が欠けているところでは、シカやトナカイ(カリブー)やヘラジカは落ちた角をかじって、ミネラルを再吸収する。(p.47)

私が見かけたのはメス鹿だったので、角が生えるわけではありません。なのでこの引用元で指摘されている事例とは一致しませんが、関係がないとは言い切れないかも(素人考え)。

というわけで、人間の感覚からすると栄養補給とは考えられないような行動で、彼らは色々と補給する場合もあるようですね。

もっとも、私が見た鹿たちのこれらの行動が、この本に記述されている内容と合致するとは必ずしも限らないので、こういう事例もあるんだな程度に読んでいただければ幸いです。私も専門家でもなんでもありませんので。

以上、奈良公園界隈の鹿の、私が見かけたちょっと不思議な行動をまとめてみました。

※2016/07/17 写真5を追加し、当該項目の記述を加筆修正。

※追記

この記事を作成後、山焼きやとんど後の炭を食べる鹿について下記の記事を作成しました。

鹿スナップ集 vol.206 炭を食べる鹿2017
http://naraphoto.blog.jp/archives/1064069839.html
鹿スナップ集 vol.216 炭を食べる鹿2018
http://naraphoto.blog.jp/archives/1069550630.html

※追記ここまで

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